パズルと着せ替え…両パートの独立性が絶妙
『プロジェクト・メイクオーバー』は、マッチ3に着せ替え要素を盛り込んだパズルゲームアプリ。プレイヤーは、テレビ番組“Project Makeover”のディレクターとなり、クライアントを大変身させていくのが目的となる。
ステージ(パズル)をクリアするごとに貰えるコインを用いて、クライアントの身なりやファッション、部屋の装飾に至るまでを変身させていく。シンプルな3マッチのパズルゲームはもちろん、本作はこれらの変身パート(着せ替え要素)がユーザーから支持されている。
コーディネートする部位ごとに3種類のパターンから選択する方式のため、ファッションに疎いプレイヤーでも困ることなく進められる。髪型、メイク、服装などをプレイヤーの好みに合わせて自由に組み合わせられるので、遊ぶ人によって個性が出るのもポイント。
また、着せ替え要素はクライアントだけでなくプレイヤー自身(ディレクター)にも用意されていて、部屋とアバターを設定できる。こちらはより自由度が高く、インターネットを介して他のプレイヤーに見せることも可能。他のプレイヤーとはフレンドになることもでき、パズルに挑戦する際に必要なハートを送り合うことができる。
クライアントとその部屋を着せ替えていくことで、本作のストーリーも進行していく。ゲーム内のテレビ番組“Project Makeover”を巡って繰り広げられる物語は、海外ドラマを見ている気分にさせてくれる。
そして、メインコンテンツとされているパズルステージだが、新しい服やインテリアを用意する際に必要になる“コイン”を入手する手段として用意されている。
パズルステージでは稀に“ミステリーボックス”を獲得するチャンスが訪れ、クリアすると大改造の際やアバターのカスタマイズに使用できるアイテムがゲットできる。
レアリティが高いアイテムが出現することもあるのだが、ミステリーボックスはステージクリアに失敗すると消えてしまう仕様。そのため、ブーストアイテムやコンテニュー用のジェム(有償石)を使うことを促すシステムとして機能している。
体感では2~3時間ほどプレイしたあたりから徐々にパズルステージの難易度が上昇し、初見クリアが難しくなってきた。通常であれば試行回数を増やしてステージを突破しようと考えるが、ミステリーボックスの存在があることで「絶対にクリアしたい!」という心理になり、ブーストアイテムやコンテニューの使用ハードルが低くなった。
また、ストーリーパートとパズルパートがある程度独立しているのが絶妙で、ライフ(スタミナ)が尽きるまでパズルに熱中して、回復までの間で貯めたコインを使用して着せ替えで遊ぶ、といったサイクルがゲーム内で完成している。
クライアント一人分のタスクを完遂すると30分ライフが無制限になる仕組みもあり、かなり熱中度は高いと言える。
ステージクリア目的の課金を促すも、基本は少額課金か
そんな本作のマネタイズだが、パズルステージのクリアを目的としたプレイヤーの“ジェム”への課金が主となっている。
先述のミステリーボックスの存在はもちろん、目に見えて上昇していくステージ難易度はかなり厳しめに調整されている印象を受ける。ブーストアイテムやコンテニュー、ライフの回復にはジェムが必要となるため、円滑に進める(あるいはプレイし続ける)ために課金すると見られる。
コンテニューにはジェム300個、ライフ補充にはジェム200個が必要となる。
【ジェムのラインナップ】
・500個(250円)<単価:0.5円/割引率0.0%>
・1500個(610円)<単価:約0.41円/割引率18.0%>
・3300個(1,220円)<単価:約0.37円/割引率26.0%>
・6700個(2,440円)<単価:約0.36円/割引率28.0%>
・17000個(6,100円)<単価:約約0.36円/割引率28.0%>
・35000個(12,000円)<単価:約0.34円/割引率32.0%>
おそらく、ガチャで大量使用を想定するアプリとは違い、必要に応じて少しずつジェムを使用するパターンが多い。そのため、主にジェム500個(250円)、ジェム1500個(610円)といった少量課金が行われていると思われる。
また、時節に合わせたセールも実施。ジェムとブーストアイテムがセットになったお得なパッケージを販売している。調査時点では「母の日セール!」が開催され、両パッケージが共にステージを攻略したいプレイヤーに訴求した。
全体的に少額課金が主になっているため、プレイヤーの母数をひたすら増やす方向のマーケティング方針が取られているようだ。
具体的には、実際のゲーム内容からかけ離れた広告クリエイティブによって多くのユーザーの関心を引く手法で、本作の広告には「不快」「不潔」といった悪印象を抱くユーザーが少なくないと見られる。実際のゲーム内容の面白さが誤解される可能性があるのは、先例である『ガーデンスケイプ』といったアプリと同じ状況といえる。
実際に無料ダウンロードランキング上位に位置し、かつセールスランキングも好調なことからマーケティングの効果が出ていることは確かだが、ブランディングの観点からは得策でないことは自明だろう。
インフルエンサーの動画投稿も追い風か
参考程度にだが、件の広告は非常にインパクトの強いクリエイティブ(ポジティブに捉えれば)であることから話題性が高く、インフルエンサーが拡散する動きもみられる。動画投稿サイト等で取り上げられた実際のゲーム内容を見て興味を持ったユーザーが流入するといったルートは一定数あると思われる。
昨今のマッチ3パズルアプリは、おなじみの親しみやすいパズルパートに加えて独自の要素を組み込んだゲームがヒットしている。『プロジェクト・メイクオーバー』もその例に漏れず、海外ドラマのような展開と、独自の着せ替え要素を盛り込むことで本作ならではの楽しみを提供している。
ただ、広告はイメージ映像と捉えられる範囲で運用してほしいところ。実際のゲーム内容と混同されてしまう表現は避け、せめてネガティブイメージを持たれにくいものにしてほしい。
本作でドラマを展開するキャラクターたちは皆個性的で魅力をもっているので、広告クリエイティブによって全体のイメージが損なわれるのは作品とってもメリットにつながらないし、いちゲームファンとしても悲しいことではないだろうか。